末廣堂は、大正元年創業の扇子問屋さん。扇子の二大産地は京都と名古屋で、それぞれ京扇子、名古屋扇子と呼ばれています。どちらも材料と作り方は同じですが、京扇子が婦人物・舞扇などの高級品を対象としているのに対し、名古屋扇子は祝儀扇・男物などの量産品が主体です。名古屋扇子は、宝暦年間(1741~1764)に京都から現在の西区幅下(名古屋城下)あたりに移住してきた井上勘造親子によって始められたと伝えられています。言うまでもなく、末廣堂では名古屋扇子を取り扱っています。
取材で伺わせていただいたのは、新道店。たくさんの扇子が並び、とても美しいです。
―家業で扇子問屋を営んでいる、川瀨なをみ様にお話を聞かせていただきました―
Q:名古屋扇子の魅力は何だと思いますか?
A:すべて手作りである、その技術が素晴らしいと思います。
扇子は、様々な工程を分業で行って作られます。どの工程が欠けても完成しません。たくさんの職人がいて、一つの扇子が出来上がります。「職人が技術を身に着けるまで、5年から10年かかると言われていて、練習する期間は一種の投資」とおっしゃっていました。
Q:こだわり・大切にしていることは何ですか?
A:PRをして、多くの人に商品とお店を知ってもらうことを大切にしています。
たくさんの電話を掛けて商品を売り込むという、昔ながらの営業方法を経験してきた川瀨様。時代の変化とともに、商品を売るためのPRの方法も変化してきました。現在は、HPやInstagram、FacebookでもPR活動をされています。ネット上の情報は、いつ・どこで・誰が見るか分かりません。高齢化が進む伝統産業において、インターネットでのPR、特にSNSを用いたPRは難しいものです。しかしそのような状況でも「PRで知ってもらうことはとても重要だ」と強く訴えていらっしゃいました。
Q:HPに「時代に合わせた新しい商品を提案」との記載がありましたが、どのような商品を製作しているのですか?
A:名古屋友禅の生地を使うなど、異なる素材での商品を製作しています。
普段のお仕事の合間に、新しい商品を考えていらっしゃるそうです。ただ、扇子から新しい商品を作ることは難しいといいます。着物生地のような伝統産業であれば、かばんや巾着、アクセサリーなどへの発展が可能です。その点扇子はあくまで扇子であって、発展が難しいものです。
Q:扇子がどのように用いられると良いと思いますか。
A:日常使いがなされると良いと思います。
扇子は、夏の暑いときに涼をとるためだけでなく、お宮参りや結納といった、伝統文化にも使用する場面が多いです。しかし海外では、扇子をアクセサリー感覚で用いることもあるそうです。この洋服にはこの扇子、といったように、服に合わせて扇子を選ぶため、複数本の扇子を持つ人もいるのだとか。海外のように、日本でも扇子の日常使いが広まると、伝統を守ることにもつながると思います。
―ここで川瀨様に伺った、扇子の豆知識―
扇子はとても縁起の良いものです。骨組みを留めている部分を要(かなめ)といいますが、この部分からの広がりが、繁栄や発展を表します。これを「すえひろ」と言うそうです。実際のところは分かりませんが、社名の由来はこれなのかも・・・。
《わざもん衆について》
名古屋の工芸品には14品目あります。「わざもん衆」とは、1つの工芸品から1事業者ずつ集まってできた集団です。「わざもん衆」は、「技」の伝承と「技」の向上を目指しています。現在は、
・名古屋提灯―伏屋商店
・名古屋友禅 型友禅―赤塚染工場
・名古屋黒紋付染―武田染工
・名古屋扇子―末廣堂
・尾張七宝―加藤七宝製作所
・名古屋仏壇―後藤太郎仏壇店
・瀬戸組子―木工房 玄翁屋
の7事業者で構成されています。
Q:「わざもん衆」では、どのような取り組みをしているのですか?
A1:最近では、クリエイターズマーケットへ出店しました。
クリエイターズマーケットとは、様々なジャンルの作品が出展され、購入も可能な、ものづくりに関する大きなイベントです。2023年6月に行われたvol.48に、わざもん衆も出店しました。12月に行われるvol.49にも、出店を予定しているそうです。みなさん足を運んでみてはいかがでしょうか。
A2:PRを大切にしています。
Instagramには「わざもん衆」のアカウントがあります。ストーリーなども多く挙げられているため、名古屋の伝統工芸を、身近に感じられることでしょう。
伝統産業の担い手の高齢化が進んでいることが問題視されていますが、名古屋の伝統産業も例外ではありません。「わざもん衆」では、協力して活動を行っているのです。
―最後に―
末廣堂の扇子は、とても美しいものでした。新道店では、扇子の購入はもちろんのこと、オリジナル扇子の注文・扇子づくりの体験もできます。また、オンラインストアでの購入も可能です。
取材にご協力してくださった川瀨様、ありがとうございました。
・所在地
末廣堂 本社
〒451-0044
名古屋市西区菊井一丁目1番8号
電話 (052)562-0135
FAX (052)571-1011
末廣堂 新道店
〒451-0043
名古屋市西区新道一丁目20番14号
電話・FAX (052)562-2267
営業時間 10:00~17:00
日曜・祝日定休
[末廣堂]
・ホームページ
suehirodo_sensu
[わざもん衆]
・ホームページ
wazamon_jp
【取材・執筆】花村・加藤・中山・佐野
この記事は2023年10月の情報です。
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