若者×地域 -掛け算で生まれるまちづくり-
- ささラボ
- 2019年5月28日
- 読了時間: 5分
更新日:2019年10月2日

肌寒くなってきた11月中旬の午後6時。中村区役所3階の一室にて、あるワークショップが開かれました。
それは、中村区役所が主催する「みんなでつくる太閤秀吉功路プロジェクト!」ワークショップ。集まったのは、経験豊富な地元の方々ばかり……と思いきや、大学生も参加していました。
新しいアイデアを持つ大学生。そして、地元に詳しい住民。その両者が組み合わさることで何が起こるのでしょうか!ささラボ取材班はその真相を探りに行きました!
フレッシュさ溢れるワークショップ!? まちづくりに若者が加わった!
大都会も、住宅街も、昭和レトロな街並みも。色んな要素が集まった街”名古屋市中村区”。中村区の住民は”とある戦国武将“を誇りに感じているそうです。 それは豊臣秀吉。天下統一を果たした秀吉は、中村区で生誕したと言われています。 このことを中村区に校舎を構える愛知大学の学生に聞いてみると「歴史好きにとっては有名だけど、周りの学生は知らない」という声が。実は、豊臣秀吉が中村区で生まれたということを他の地域の人にはあまり知られていません。 そこで、中村区は新たな取り組みに乗り出しました! それは「太閤秀吉功路 人生大出世夢街道」というものです。秀吉が中村区で生まれたことを発信するため、名駅から豊国神社までの通りを「太閤秀吉功路」と命名し、秀吉のエピソードをモチーフとしたモニュメントを設置する計画を始動しました。

「モノを置くだけではいけない、取り組みが必要」と語るのは、事務局の山下さん。山下さんは、「太閤秀吉功路」を最大限に生かすきっかけとして、地元住民が参加するワークショップを開催。さらに、斬新で奇抜なアイデアを持つ大学生にも参加してもらうことにしました。 しかし、このワークショップには課題があります。それは世代間の壁。若い世代である大学生にとって、40代、50代などの層と接する機会は限られています。ですが、「若者が積極的にまちづくりに参加し、壁が薄くなっていけば、若者×地元住民の掛け算は何倍にもなる」と山下さんは意気込んでいます。その言葉の通り、参加した大学生に話を聞いてみると壁を感じていないという声も。

「歩いたからこそわかった」ワークショップを通じて知った中村区の魅力
中村区に在住し、ワークショップに参加した白鳥さんは、「若い人がこの街をどう思っているのか気になった」と取材班に教えてくれました。
それに対し、大学生の山本さんは「意外と歴史のある街」と答えました。確かに、中村区の歩みをたどっていくと歴史的な面が色濃く残っています。しかし、「接点がなければ知ることはなかった」という声が。中村区には歴史という魅力がありながら、存在そのものが知られていません。それには理由がありました。それは、「カタチ」が不足している点です。中村区は秀吉にちなんだ地名が多い一方で、秀吉にまつわる史跡が豊富とは言えません。
「太閤秀吉功路 人生大出世夢街道」と呼ばれる取り組みは、歴史の文化が色濃く残っている中村区で「カタチ」のある歴史を作る第一歩となります。中村区役所の職員の「太閤秀吉功路をきっかけに中村区を歩いてみてほしい」という話の中には、そのような狙いが見え隠れしていました。
若者がまちづくりに果たせる力とは……?
ワークショップを覗いてみると、TikTokやインスタグラムなど若者世代の大学生のトレンドと歴史を掛け合わせたアイデアが目につきます。そのような奇抜で斬新なアイデアを説明する大学生とそれを真剣な面持ちで聞く地元の方々。更に、アイデアを出していく取り組みでは、すらすらと書きだしていく大学生に対して、地元の方々は熟考の様子。若者が持つ柔軟なアイデアという強みがワークショップの至る所で発揮されていました。

しかし、地元の方々も黙ってはいません。中村区に住み続けてきたからこそ、地域に関する知識が豊富な上、長年の経験という強みがいたるところにいきわたっていました。 このワークショップの主催者でもある中村区役所の水野さんは「互いの持つ部分を補完しあえた」と語っています。若者には若者の強みが、地元の方には地元の方の強みがあります。互いの強みをかけ合わせることで、力は大きく膨れ上がります。まちづくりに参加することは身の丈に合わないから、と敬遠せずに学生生活を楽しむ機会の一つとして、そして地域のことを知るきっかけとして参加してみてはいかがでしょうか。

編集後記
まちづくりは住民から - 見えてきた課題
この取り組みは中村区が事業の一環として行われています。中村区役所の水野さんは「いずれは、この事業を活用し、地元の方々が主体となって中村区を盛り上げてもらいたい」と説明していました。まちづくりの主役は、行政ではなく街に住む人たちにあるということです。 中村区に住む長谷川さんは「地元が盛り上がらないと、この取り組みは成功しない」と語っていました。行政も、まちの人々も、全ての人が同じ方向を向いてまちづくりをしていくことが必要なのではないのでしょうか。 ワークショップを見ていて、まちづくりの中心となっている方は年齢層が高めの方が多いと感じました。では、若者はまちづくりに関われないのでしょうか?それは違うと思います。もちろん、まちづくりに参加していくと世代の壁を感じる場面があるかもしれません。ですが、本気の姿勢で参加していけば、受け入れてくれるのではないでしょうか。私はそのように感じました。
【取材・執筆:ささラボ取材班 永原】
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